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RevOpsとは何か?——営業・マーケ・CSを統合する新しい成長モデル

RevOpsが注目される背景

BtoB企業の成長戦略において、営業・マーケティング・カスタマーサクセスの連携は長年の課題であり続けてきた。多くの企業がそれぞれの部門にKPI(重要業績評価指標)を設定し、専門性を高める「分業体制」で成果を追求してきた。しかし、SaaS(クラウド型ソフトウェア)をはじめとするサブスクリプションビジネスの台頭により、顧客との関係は「受注して終わり」ではなく「契約後の継続・拡大」が収益の柱となった。この変化に伴い、部門間の分断がそのまま収益の機会損失につながる構造が顕在化している。 こうした背景から、米国を中心に広がりを見せているのが「RevOps(Revenue Operations/レベニューオペレーションズ)」という考え方である。日本ではまだ導入事例が限られるものの、収益プロセス全体を一元的に設計・管理するこのアプローチに関心を寄せる企業が増えている。本稿では、RevOpsの基本的な考え方、従来モデルとの違い、そして日本企業が取り入れる際のポイントを整理する。

RevOpsの定義と従来モデルとの違い

RevOpsとは、企業の収益(Revenue)に関わるオペレーションを、営業・マーケティング・カスタマーサクセスの枠を超えて統合的に設計・運用する組織モデルである。具体的には、データ基盤、業務プロセス、ツール、KPIの設計を横断的に管理する専門チームまたは機能を指す。 従来のモデルでは、マーケティング部門が「リード獲得数」、営業部門が「受注金額」、カスタマーサクセス部門が「解約率」といったように、各部門が個別のKPIを追っていた。それぞれの部門内にオペレーション担当者が存在し、使うツールもデータの定義もばらばらであることが珍しくない。 RevOpsモデルでは、これらのオペレーション機能を一つの組織に集約する。リードの定義、商談ステージの基準、顧客データの管理ルール、レポーティングの仕組みといった「収益活動の基盤」を統一し、部門間で共通の言語と数値をもとに意思決定できる状態をつくることが目的である。 重要なのは、RevOpsは各部門の専門性を否定するものではないという点だ。営業が商談を進め、マーケティングが認知を広げ、カスタマーサクセスが顧客の成功を支援するという役割分担は変わらない。変わるのは、その土台となるオペレーションの設計と管理の在り方である。

なぜ今RevOpsが必要なのか——分業体制の限界

分業体制が機能していた時代には、部門ごとに最適化を進めれば全体の成果も向上するという前提があった。しかし、現在のBtoBビジネスでは、この前提が成り立ちにくくなっている。その理由は主に三つある。 第一に、購買プロセスの複雑化である。BtoBの購買意思決定には複数の関係者が関与し、情報収集から比較検討、社内稟議まで長い期間を要する。顧客はマーケティングコンテンツに触れ、営業と商談し、導入後はカスタマーサクセスと対話する。この一連の体験が部門の境目で途切れると、顧客側に不信感や不満が生まれやすい。 第二に、データの分断による判断の遅れである。マーケティングオートメーション、SFA(営業支援システム)、カスタマーサクセスツールがそれぞれ独立して運用されていると、「どのチャネルから来たリードが最終的にLTV(顧客生涯価値)の高い顧客になるのか」といった、収益全体を見渡した分析が困難になる。経営層が正確な状況把握をするためにも、データの統合は不可欠である。 第三に、サブスクリプション型ビジネスの拡大である。月額・年額課金モデルでは、新規獲得だけでなく既存顧客の継続利用やアップセル(上位プランへの移行)が収益を左右する。営業が獲得した顧客をカスタマーサクセスが引き継ぎ、利用状況に応じてマーケティングが再アプローチするといった部門横断の連携が、収益維持に直結する。 これらの課題は、個別部門の努力だけでは解消しづらい。部門を横断するオペレーションの設計者が必要とされる所以である。

RevOps導入のメリット

RevOpsの導入によって期待できる効果を、三つの観点から整理する。 一つ目は、収益プロセスの可視化と予測精度の向上である。データ基盤を統一することで、リード獲得から受注、契約継続までの各段階における転換率や所要期間を一気通貫で把握できるようになる。これにより、売上予測の精度が高まり、経営判断のスピードと質が向上する。米国のBtoB企業を対象とした調査では、RevOpsを導入した企業はそうでない企業と比較して売上成長率が高い傾向にあるとの報告もあるが、業界や企業規模による差異が大きいため、日本企業への直接的な適用については慎重に見る必要がある。 二つ目は、部門間の摩擦の低減である。「マーケが渡すリードの質が低い」「営業がリードをフォローしない」「カスタマーサクセスに顧客情報が共有されない」——こうした部門間の不満は多くの企業で聞かれる。RevOpsでは、リードの定義、引き渡し基準、顧客情報の共有ルールを統一的に設計するため、属人的な認識のずれを構造的に減らすことができる。結果として、部門間の建設的な協働が促進される。 三つ目は、ツールコストの最適化である。部門ごとにツールを導入・運用していると、機能の重複や連携不足が生じやすい。RevOpsの観点で全体を俯瞰し、必要なツールを選定・統合することで、コスト削減と運用効率の改善を同時に実現できる。特に、成長フェーズにあるスタートアップやミッドマーケット企業では、ツールの乱立が業務の複雑化を招いているケースが多く、この整理だけでも大きな効果が見込める。

日本企業がRevOpsを取り入れるためのポイント

RevOpsの概念は米国発であり、日本企業がそのまま輸入して適用できるとは限らない。日本企業の組織文化や商慣習を踏まえたうえで、段階的に取り入れることが現実的である。以下に、導入を検討する際のポイントを三つ挙げる。 第一に、全社一括導入ではなく、小さく始めることである。まずは営業とマーケティングの間、あるいは営業とカスタマーサクセスの間といった、二部門間のデータ統合やプロセス接続から着手する方法が取り組みやすい。共通のダッシュボードを一つ作成し、同じ数字を見て会話する習慣を根付かせるだけでも、組織の意識は変わり始める。 第二に、専任の担当者またはチームを置くことである。RevOpsの機能を既存の部門に「兼務」で持たせると、結局は各部門の論理が優先され、横断的な視点が失われやすい。少人数でも構わないので、収益プロセス全体を見渡す役割を明確にすることが重要である。日本ではまだRevOpsの専門人材が少ないため、営業企画や事業推進の経験者がこの役割を担うケースが現実的だろう。 第三に、経営層の理解と関与を得ることである。RevOpsは部門横断の取り組みであるため、各部門の責任者だけでは推進が難しい場面が出てくる。KPIの再設計やデータの統合には、経営レベルでの意思決定が不可欠である。経営会議の場で収益プロセス全体の状況を共有する仕組みをつくることが、RevOps定着の鍵となる。 なお、RevOpsの導入効果が明確に表れるまでには一定の時間を要する。短期間での劇的な変化を期待するのではなく、四半期ごとに改善点を振り返りながら、自社に合った形を模索していく姿勢が求められる。

まとめ

RevOpsは、営業・マーケティング・カスタマーサクセスのオペレーションを統合し、収益プロセス全体を最適化する組織モデルである。部門ごとの個別最適から全体最適への転換を目指すこのアプローチは、購買プロセスの複雑化やサブスクリプションビジネスの拡大を背景に、その必要性が高まっている。 日本企業においては、まだ導入の初期段階にあるといえる。しかし、BtoB事業で持続的な成長を実現するためには、部門間のデータとプロセスをつなぎ、顧客体験の一貫性を担保する仕組みが不可欠であることは、多くの実務者が実感しているところだろう。 大規模な組織変革を一気に進める必要はない。まずは自社の収益プロセスにおける部門間の「つなぎ目」を点検し、データの断絶や認識のずれが生じている箇所を特定することから始めてみてはどうだろうか。その一歩が、RevOpsの考え方を自社に根付かせる起点になるはずである。

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